「インサイト」とは、顧客やターゲットの行動の根底にある、時には本人さえも気付いていない動機・本音のことです。
大勢を対象にしたアンケートなどによって得られる定量的なデータとは異なり、個別の取材などを通して潜在的な本音を探った定性的なデータは、ターゲットの心理や購買動機を深く知るために活用できます。
これは採用・転職市場においても同じで、社会人や転職者の心理を知ることは採用活動や採用ブランディングの大きな手助けとなるでしょう。
しかし、ターゲットとなりうる社会人とめぐり合うことは難しく、またそのような社会人からしっかりとヒアリングする時間を取ることが難しい場合が多いのではないでしょうか。
そういった悩みを解決すべく、Brandgeでは一人の社会人を徹底的にフォーカスしたインサイト記事をご提供します。(※あくまで社会人全体ではなく、個人に対するインタビューの結果ですので、情報の取捨選択にはご注意ください。)
大手企業に在籍する社会人3年目のインサイト
現在、社会人3年目にキャリア観や学生時代の経験についてインタビューしました。
対象者の属性紹介
今回の調査に協力してくれた社会人の方について簡単にご紹介します。
大手宿泊業界に所属する社会人3年目。大学は早慶。東アジアにルーツがある彼は、学生時代には学生団体に所属して様々な国に訪れ、そこで感じた国際問題を発信する活動に従事。また就活前に一心発起して、半年間アメリカの食品メーカーでインターンとして参画。その後、アメリカでの暮らしの経験から大手宿泊業界に就職
企業を選択する基準
ではさっそくインタビュー内容をご紹介していきます。今回は大きく分けて二つ、キャリア選択の基準についてとインターンシップについて答えてもらいました。
なぜ大手企業・その企業を選んだのか
「学生時代のアメリカ留学でのAirbnbが一番のきっかけかな」
就活を直前にして、「いまこの迷いの中就職活動するのは違う。軸を定めたい」と考え、アメリカへ飛び食品メーカーの元でインターン。その際、最も影響を受けたのがAirbnbだった。
海外生活ではエアビ(民宿)を転々とし、中長期の宿泊を繰り返していた。長期間の宿泊で転々とする中で、毎日がはじめましての挨拶、一緒に過ごす時間や食事を共有する。当初人見知りだった自分もどんどん改善されて、人と深くかかわるきっかけを提供してくれるのが宿泊や環境が持つ力だと感じるようになった。そんな旅は価値観や行動を変える。だから、旅の魅力発信している会社にいきたい。
これが就活当時の彼の軸だった。
大手企業に就職して、何を感じたのか
大手企業ならではの入社して良かったこと
・毎日ポジションが変わっても体制が回る仕組み。
・影響力:知名度があるだけに認知率が高いからよりたくさんの方々に見てもらえる
施設の人数は50名。すごい小さい組織がたくさんある中で、宿泊業で働くということはチームで動くということ。
個人の作業はほぼない。連携が求められる。そんな環境でも、どんなポジションでも回るような仕組みがすでにある程度整っていることはすごいと感じる。
また、ホームページのスタッフ紹介や食事の紹介の記事をたくさんの方々が見てくれることに、影響力あると実感した。
大手企業に入って感じた悩みや課題
現場で働いて感じるこの先のキャリアへの不安だ。
「現場が施設の企画を全部考える」
そう思っていたが、実際の現場は意外とトップダウンで決められることも多く感じる。
また、入社当初から彼には目指していた社内のポジションがあったかが、そこに行くためには支配人のような役割を一度経験しないと役職に就けない。実際、希望のポジションには外部からプロフェッショナルが採用されるケースもある。自分は果たしてこのキャリアを経てでもそのポジションにたどり着きたいのかと自問自答することが多かった。
転職ではなくとどまることを決めた理由
周りが転職を考える中、自分なりにキャリアをどう考えたか
「最初の1~2年は現場で企画するような仕事ができていた。」
職場でのオペレーションを変えてみたり広報の仕方やHPでのブログ記事の執筆。彼のやりたいことを職場で実践する時間はあった。ただしほとんどがサービス残業だった。基本的には業務時間外で取り組んでいた。
基本的に接客や食事やお部屋の準備すべてを対応してから、はじめて自分自身の時間をとっていた。
しかし、コロナの影響で状況は一変。当初は倒産する可能性が社長から連絡されることもあった。幸いなことに、GoTo Travelのキャンペーンの影響で予約数は増加。だがそれがゆえにつらいこともある。
「この3年間で一番忙しい。毎日満室が続いており、休みなし。また政府が取り決めたキャンペーンであるため顧客対応で我々もわからないことが多々ある。」
「何より、このGoTo Travelのキャンペーンが終了した際の予約数は一気に減っているところもある。今後、この業界がコロナの影響を受けることは逃れられない。」
GoTo Travelであったりコロナの影響を受けて経営方針もよりトップダウンになってきたと感じており、日々のスキマ時間すら生み出すことができず、本当にこのままでいいのだろうかと一時期は精神的にもしんどいと感じる日もあったという。
転職をするにも自分にはどのような職種が適切なのか、社会に出て何をしたいのかも明確に定まり切っていない中で、やみくもに選択してもまた同じだと考えていたという。当初は会社に5年在籍して、最速のマネージャーを目指していたが、コロナの影響であったり日々の業務に取り組む中でどんどんキャリアの方向性や大切にしていきたいものも変わってきたと言う。
今後はどんなキャリアを歩んでいきたいか?
これまでは学生時代の経験から「旅」の魅力を発信していくということを軸にしていた。つまり、「何を(旅の魅力)」伝えることに注力していきたい。これからは「どのように」発信していくかを極めたい。
現職では伝えていくスキル=ブログでの記事の執筆を担当したが、スキルレベルにまでは上達しなかったと感じている。どのような手段が良いのかというところを突き詰めて考えたいと思い、彼はコロナによる自粛期間中にプログラミングであったり読書をしたり、何が自分にとって最適なのかを考え実行する時間を過ごしてきたという。
その結果、彼の答えは「動画」だった。
彼自身学生時代に動画編集い取り組む機会もあり、もともと黙々と1つの作業に打ち込むことが好きであることも相まって、自分が共感したこと、伝えたいことを”動画”という手段で、その中でも特に””自分で作ったロゴやイラストをアニメーションのように動かす形で発信していきたい。そのスキルが身につく業界に次は身を置きたいと彼は話してくれた。
まとめ
大手企業に在籍する社会人3年目の生の声をお届けしました。いかがだったでしょうか。
「これまで発信することや伝えることに対して”何を”を重視していたが、仕事を通じて自分はそこまで「何」にこだわりを持っていることではないことがわかった。だからこそ、何か自分が伝えたい、共感したことがあったときに、ちゃんと想いを届けられる”スキル”が今の自分には必要だと感じた」
彼のように、まずは「スキル」を身につけるという目的での転職は社会人最初に転職理由として多いのかもしれないと思いました。
また社会人3~4年目はかなり分岐点になると感じました。ある社会人は仕事の一連の流れを覚えて生きて、後輩もでき、仕事を楽しいと感じる人も多くいます。
しかしその一方で、次の役職であったり課される業務内容が何となく見えてくるタイミングでもあり、ましてや自分の行きたいポジションに対しての必要な業務や役職のステップであったり、具体的な年数までだいたい感じ取ることができるようになってきます。こうなると、いかにVisionに共感していても、年功序列や組織体制や社内でのキャリアアップまで時間がかかる、もしくは裁量権がない場合は外に出たいという気持ちが働くのだと思います。