「インサイト」とは、顧客やターゲットの行動の根底にある、時には本人さえも気付いていない動機・本音のことです。
大勢を対象にしたアンケートなどによって得られる定量的なデータとは異なり、個別の取材などを通して潜在的な本音を探った定性的なデータは、ターゲットの心理や購買動機を深く知るために活用できます。
これは採用・転職市場においても同じで、社会人や転職者の心理を知ることは採用活動や採用ブランディングの大きな手助けとなるでしょう。
しかし、ターゲットとなりうる社会人とめぐり合うことは難しく、またそのような社会人からしっかりとヒアリングする時間を取ることが難しい場合が多いのではないでしょうか。
そういった悩みを解決すべく、Brandgeでは一人の社会人を徹底的にフォーカスしたインサイト記事をご提供します。(※あくまで社会人全体ではなく、個人に対するインタビューの結果ですので、情報の取捨選択にはご注意ください。)
大手企業に在籍する社会人4年目のインサイト
現在、社会人4年目にキャリア観や学生時代の経験についてインタビューしました。
対象者の属性紹介
今回の調査に協力してくれた社会人の方について簡単にご紹介します。
大手総合商社に所属する社会人4年目。早慶出身の大学では4年間アメリカンフットボールの部活動に所属し関東の1部リーグで全国1位を目指す日々。両親が商社マンだという彼も自分以外の家族が海外で過ごしており、海外で働くという意志をもって商社へ入社。
企業を選択する基準
ではさっそくインタビュー内容をご紹介していきます。今回は大きく分けて二つ、キャリア選択の基準についてとインターンシップについて答えてもらいました。
なぜ大手企業・その企業を選んだのか
「両親が海外に暮らしていた経験があったから、海外で働ける会社に憧れがあった」
「英語が話せるようになりたいとか、そんな感じの憧れベースだよ」
ご両親が商社でもあり、その働きぶりや海外で働くことができることも既知だった。
また、4年間体育会の部活動をぶっ続けでやっていたため、就活に専念できなかったという。中には部活で疲れすぎてしまい、大手企業の面接に行けなかったことの何回かあった。
大学には起業や学生団体とか課題を見つけて就活をしている人たちも多かったが、自分自身は将来やりたいことがなくて特になく、大学生活もアメフトしかやってこなかった。
だからこそ、「勝つために仲間と一緒にやってきました」といった姿勢がある会社を選びたいと感じた。
また、OBの方々を見ても商社に就職した先輩たちはイケてる先輩が多いなと直感的に感じたこともある。現職の商社に決めたのも、単純にOBに応援してくれる人が多かったからだという。
「応援してくれる人がいるのに、内定は断りづらいなって思って。最後は温情の決断でもあった」
と彼自身話してくれた。
大手企業に就職して、何を感じたのか
大手企業ならではの入社して良かったこと
「いまはとにかく仕事が楽しい」
彼に合って最初にこう答えてくれた。
大企業のわりにフラットだと感じているという。
商人と言われている商社業界では、日々、グローバルな人財との交渉事が多い。
そんな中で交渉に負けている先輩がいたら「しっかり話せてないですよ」と正しい主張は伝えやすい環境だという。
「自分自身も足りない部分は後輩からも突き上げてほしいし、わからないとことに関してはチームで補っていきたい」
しっかり自分自身の意見を言うことのできる環境が、部活動時代の環境に似ていたのかもしれない。
大手企業に入って感じた悩みや課題
彼は、「今は悩みも課題も全然ない」と言い切ってくれた。
4年間同じ部署であり、仕事も覚えてきてどんどん楽しくなってきている。ただ社会人4年間を振り返ったときに、やはり社会人1年目都の時はやめることもよぎったという。
入社したときはとにかく英語できなかった。情報誌も読むのも書くのもすべて英語。電話の留守番もできず、業界の知識もない、何もできないと感じる日々。
「英語ができないと石だ」
「このまま終わるんじゃないか」
そんな無力感に襲われたことも何度もあるという。
ベンチが嫌いだと言い張る彼はスポーツでも常にスタメンであったり試合に出ることを強く望んでいた。
だからこそ、社会人1年目で何もできない自分に対して焦りも感じていたが、と同時に英語をとにかく極めようと覚悟が決まったという。
その時には金額など気にせずとにかく自己投資した。
「留学を言っていない自分はとにかく人と話すという”場数”を踏むことが大事だ」
そう感じた彼は、英語でのファシリテーターを担当するMTGを1か月後に控えてたタイミングで、英会話のスクールに通い始めた。目の前に英語を話さないといけないという強烈な目的があったから、自分は通ったのだと話していた。
英語の力をつけていき、徐々に英語での交渉がある重要なMTGにも同席させてもらえるようになった。
どのようにして彼は与えられた機会を勝ち取ったのか?
「まずは英語が話せるようになったからかな」
彼は振り返ってそう話してくれた。それと同時に、いかに上司に信頼してもらえるかが大事だと話してくれた。
「”こいつにやらせておけば、ビジネスチャンスが大きくなるよな”と思ってもらえるように心がけているよ」
彼自身もお客様との関係構築では型にはまらない営業スタイルだと話してくれた。ある企業の前ではビビンバを5杯食べたことで仲良くなったこともあるという。
「頭が良くても、勉強ができても人として仲良くなるスキルはまた違うと思う」
彼の上司も、彼自身が人と仲良くなることが得意だと思ってもらえるようになったことが1つ機会を与えてもらえるようになったきっかけだと話してくれた。
転職ではなくとどまることを決めた理由
周りが転職を考える中、自分なりにキャリアをどう考えたか
「これまで転職を考えたわけではないけど、逆算的な思考もしていない」
まずは商社に入った最大の理由である、海外駐在までやりきりたいと話してくれた。
日々の業務に鍛えら得れて英語も話せるようになったが、日常的に英語を話している訳ではない。
やはり海外に駐在して実際のビジネスを目の前に英語で交渉している人たちにはまだまだ追い付けていないと感じてる。
「仕事ではなくゲームのような感覚で楽しんでいる」
交渉であっても商談であっても、自分がいくら稼いでいたかがわかる。そのためであれば残業も全く苦に感じないし、むしろお金もらって仕事できることが嬉しいとも感じている。
ただ商社でのお仕事を通じて、以下のように感じたという。
「自分が楽しいと思えるのであれば種目とかにもこだわらない」
アメフトでのチームスポーツの影響もあって、どんな仕事でも、一緒にいる人が良くて、環境があればそれで満足できるというように感じたという。
なぜ彼がそんなにも商社のメンバーと環境に満足しているのかを聞いてみた。
「チームの雰囲気はお互いの心がけだと思っている」
彼自身、銀行や証券などは個人プレーな営業が多いイメージがあったという。
ただ商社においては、例えば「石炭」という商材を扱う際にはBtoBだからこそ、買い付けの方も売り付けの方も手がかかるし、先方の担当者を説得することができてもその上司を説得しないと了承が出なかったり、プロジェクトが進行しないことはよくあることだ。必要に応じて自社の上司に出てもらうこともある。
「そんなチームプレーの中で自分の役割としてうまくいくと気持ちがよいし、試合に勝った後の高揚感がある」
スポーツに似たような感覚を感じながら、彼は続けてこう話してくれた。
「ただ、自分が点を取ったけど、アシストをしてくれた上司がいたからこその結果。必ずしも自分が最高だという考えなのではなく、支えがあったから点を決められたようなスポーツのような感覚がある。」
「逆に言うと自分が下手だと舞台にも立てないし、チャンスも巡ってこない。だからこそ健全なプレッシャーがある。」
体育会を引退した今でも、ある意味でスポーツ感覚で夢中になって、適度な緊張感の中で楽しみながら仕事に専念しているようだった。
今後はどんなキャリアを歩んでいきたいか?
「入った動機でもある、海外駐在を目指す。」
彼自身は、「石の上にも3年」の理論には賛同している。
「学生時代からスポーツを変えて、大学からアメフトを始めたときも最初の2年間は難しかった。」
「体格的に不利だったことも感じたし、やめようと思ったこともある。」
ただそこから彼はあきらめず地道に練習と努力を積み上げ、最終的にはスタメンになっていった。
「このアメフトの経験があったから、一番しんどかった社会人1~2年目でも耐えられた。」
コロナの影響もあり、海外出張ができなくなってしまうこともあるが、やはり海外に行くために入った業界ではあるため、まずはその目標を達成したいと話してくれた。
転職に関しても、その手段がベストだと思ったら、考えるかもしれないが、いまはとにかく商社の仕事が楽しいため、海外駐在を目指している。
最後にもし、今の会社を辞めたくなるような環境はどのようなものなのか、何が失われたら考えが変わるのかを聞いてみた。
彼の場合は、「扱う商材が”橋”だろうが”電気”だろうが”エネルギー”であろうが、どんなことであろうとも自分はやり切れる」と彼は話してくれた。「これがやりたいという強いこだわりはないが、仕事や業務の内容によってモチベーションが左右されることは全くない」という。
ただチームの関係が崩れたときや馴染めないメンバーであった場合に、モチベーションが下がってしまう可能性はありそうだともとも話してくれた。
やはりそれだけ商社マンには”人としての魅力”があるのだと感じた。
まとめ
大手企業に在籍する社会人4年目の生の声をお届けしました。いかがだったでしょうか。
彼自身、商社マンとしての1年目はとにかく「英語」に悩まされ続けていました。執筆者の私は実は彼とは友人で、大学時代から部活動に励みながらもTOEICの点数は申し分ないスコアをたたき出していました。そんな彼でもやはり実務の英語と資格の英語は違うということを痛感していました。彼の周りでとても優秀だといわれていた人たちも、思うように英語が上達しなかったり、苦しんでいる場面も見てきたそうです。それでも彼は学生時代のアメリカンフットボールの部活動で、初心者でも最後まであきらめずにやり続けた結果、レギュラーを勝ち取ったという経験と自身があったからこそ、
「石の上にも3年だ」
という気持ちでとにかくやり続けたそうです。社会人4年目になり仕事の流れもサイクルもある程度掴めるようになり、今はとにかく仕事が楽しいを終始話してくれた。そんな彼がいまでも現職に残る理由は「海外駐在という夢を果たすこと」そして何より「チームや部署の人に恵まれている」ということでした。
また、彼はとにかく海外駐在ということを目指していたため、インタビューを経て彼自身もあまりキャリアの計画や方向性を定めていないと感じていた。そもそもそこまでやりたいことへのこだわりもなかったため、就職活動当時も商社だけではなくメーカーや不動産業界も受けていたと話してくれました。
それでも商社を選ぶ理由には、やはりそれだけの人の魅力であふれるチームと環境があるのだと思いました。