「インサイト」とは、顧客やターゲットの行動の根底にある、時には本人さえも気付いていない動機・本音のことです。
大勢を対象にしたアンケートなどによって得られる定量的なデータとは異なり、個別の取材などを通して潜在的な本音を探った定性的なデータは、ターゲットの心理や購買動機を深く知るために活用できます。
これは採用市場においても同じで、学生や転職者の心理を知ることは採用活動や採用ブランディングの大きな手助けとなるでしょう。
しかし、ターゲットとなりうる学生とめぐり合うことは難しく、またそのような学生からしっかりとヒヤリングする時間を取ることが難しい場合が多いのではないでしょうか。
そういった悩みを解決すべく、Brandgeでは一人の学生を徹底的にフォーカスしたインサイト記事をご提供します。(※あくまで学生全体ではなく、個人に対するインタビューの結果ですので、情報の取捨選択にはご注意ください。)
22卒の優秀層就活生にキャリア観やインターンシップの経験についてインタビューしました。
近年ではインターンシップなどの機会が増え、就職活動を始める時点ですでに仕事に対する考え方をしっかりと持っている学生も増えています。
今回ご紹介する学生も、インターンシップなどを通してキャリア観を形成してきた一人です。いわゆる就活における「優秀層」の学生はどのようなキャリア観を持っているのでしょうか。
対象者の属性紹介
今回の調査に協力してくれた学生について簡単にご紹介します。
関西の旧帝大に通う22卒学生。一年生の時から長期インターンを経験しており、二年生時には海外渡航も経験。学生という立場を活かし、新卒採用・キャリア支援のビジネスに真剣に向き合ったうえで、自分をある程度客観視することができる。インターンシップには20社ほど応募し、5社の選考に通過。
優秀層学生のキャリア選択の基準
ではさっそくインタビュー内容をご紹介していきます。今回は大きく分けて二つ、キャリア選択の基準についてとインターンシップについて答えてもらいました。
どういうキャリア選択の基準を持っているか?
「自分が勝てる領域はどこなのか?」という点を第一に考えている。それを一段階要素分解すると、自分が勝てるフィールドは、①熱量が保ち続けられる、②今持っているスキルを最大限生かせる、のどちらかの戦場だと思う。
現状自分自身は数年体験を積んだ程度であり、保有しているスキルで勝負できるようなフィールドは存在しないから、①の自分の熱量が保ち続けられる領域という点で考えている。特に、自分がかつて社会的なハンディキャップを乗り越えられたというような経験から、それに近いような課題を持つ人たちを救える企業には興味があったりする。具体的な社名で言うと、LITALICOさんとかはもっとこれから詳細に知っていきたいと思っている。
実際に就職活動の中で参加するインターンシップを選ぶ時の基準はどのようなものか?
インターンでの選択基準は少し違っていて、総じて「採用に力を入れているか」という基準で選んでいる。自分自身カルチャーを大切にしており、「採用への力の入れ具合=どんな形であれ、カルチャーや組織を大事にする社風である可能性が高い」と考えている。具体的には、①インターンの体験談の評価・実績(昨年の応募倍率など)、②有給であるか(採用への力の入れ具合と相関があると考えるので)、③1dayではないか、の3点。①は特に倍率が高いところ。②は採用への力の入れ具合と相関があると考えられるため、というのが背景。
22卒就活生の経験したオンラインインターンシップとは
今年のインターンシップはオンライン開催が多くを占めたがどう感じたか?
当初は、オンラインだと職場感とかがなかなかつかめなさそうだからオフラインの方が良いなと思っていた。が、実際参加してみると生産性という点での違いはなかったというのが本音。それよりも、前後の移動時間や体への負担を考えると、オンラインの方が効率が良いのでは?と思うようになった。
また、企業側がオンラインでの開催に対してしっかり準備できているかという点で参加の満足度が全然違った。特に、満足度の高い企業では、ブレイクアウトルームの強制終了などを活かし、分刻みでのタイムテーブルの設計等をうまく行っているから、時間通りインターンシップが進み、家で受けていても、退屈させる場面がなかった。一方、満足度の低い企業の特徴としては、オフラインで開催していたコンテンツをそのまま当てはめたんだろうな、という印象を受けており、「これなんの時間なんだろう?」とPCの前で待つような時間があった。
インターンシップへの参加を通じてどんなことを学んだか?
一番は業界に対する取捨選択ができたことだったと思う。例えば、もともと採用関係のビジネスに関わっていたこともあり、人材系で働くのも楽しいかなと思っていたが、インターンであった社会人との話を通じて、キャリアを積んでからの方が人材業界に行ったほうが良いのでは?と思うようになった。他には、銀行や証券。BtoB営業のリアルをインターンやその後の座談会で、「相手からお金を引き出すために働く。そしてその中の10%ぐらいが楽しいことがある。」という風に社員から聞いたが、それに賛同できなかった。そういうところで取捨選択できたところがよかったと思う。
また、インターン生に対しても忖度なくぶつかってくれるところは非常に好感を持っている。例えば、徹底的な法令順守義務であったり、顧客目線だったり。自分が言葉尻だけでわかっているようなことでも、しっかりと本気で指摘してくれるような企業であれば、改めてインターンシップに参加してよかったと思えた。
まとめ
22卒優秀層学生の生の声をお届けしました。いかがだったでしょうか。
今年度はコロナウイルスの影響でインターンシップの応募倍率が高いこともあり、学生の動きは早いと思われます。一方で、上の内容であるように企業側の準備ができていない場合などは同じツールを使っている学生からすると見抜かれるのかもしれません。
また、採用ブランディングにおいて大切な「一貫した候補者体験」という点で、「会社全体ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しているにもかかわらず、このコロナ下のインターンシップのオンライン化にさえ対応できないのは…」と、学生から印象付けられるのは好ましくありません。
結局のところ、インターンシップの設計においてはオンラインであれオフラインであれ、学生にとってどのような体験をしてもらえるか(また設計できるか)という点が最も大切なのではないでしょうか。
今後もオンラインによる採用活動は続いていくと思われます。今回のインタビューがインターンシップ設計の参考になれば幸いです。