新型コロナウイルスの影響でオンライン化が進む就職活動。
22卒採用では、オンライン開催のインターンシップが一般的になりました。
急速な就職活動のオンライン化の中で、
「どのようにインターンシップを設計するべきなのか」
「学生からみて自社のインターンシップは魅力的だろうか」
といった悩みを抱えている担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、マイナビの提供するサービス「新卒採用サポネット」の「2022年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査」をもとに、
・市場動向の調査データ
・学生インサイトの分析
・今後の採用活動の見通し
の3点を、インターンシップの観点から解説していきます。
学生のインターンシップ申込数は増加傾向
インターンシップの申込数は年々増加しています。
また、22卒の就職活動では、オンライン化により場所や時間の制約が少なくなり、申し込みハードルが下がったことで、応募社数が増えたと考えられます。
■インターンシップ応募社数と参加社数
項目 | 22卒 | 21卒 | 20卒 |
---|---|---|---|
インターンシップ応募社数(平均) | 9.4社 | 7.7社 | 6.5社 |
インターンシップ参加社数(平均) | 5.1社 | 4.9社 | 3.6社 |
就職活動において学生の行動量が増えている要因として、以下のようなものが考えられます。
要因①:焦り
就職活動自体の早期化やコロナ禍の状況における不安から焦りの感情が生まれ、行動量の増加につながっていると考えられる。
要因②:周りの動きが見えない
Web中心の就職活動では周りの動きが見えづらく、不安を払拭するために行動量を増やしていると考えられる。
要因③:場所の制約が少ない
オンラインでのインターンシップやイベント開催により、移動時間や交通費などの事情で 参加できなくなっていた機会が復活し行動量の増加につながったと考えられる
学生のインターン参加理由は会社理解や選考参加
次に、対面形式のインターンシップとWeb開催のインターンシップそれぞれの、学生から見た参加理由の一部を紹介します。
■参加したインターンシップを選んだ理由
項目 | 対面 | Web | 差 |
---|---|---|---|
選考を受けようと考えている企業が開催していたから | 54.8% | 66.9% | 8.5pt |
志望する業種・職種に関する内容だったから | 45.7% | 60.2% | 14.5pt |
視野を広げるため | 32.8% | 36.1% | 3.3pt |
就活情報が手に入るから | 23.9% | 26.1% | 2.2pt |
Web開催のインターンシップ参加目的を見ると、本選考参加などの本来的な目的が強くなっています。
Web開催によって参加ハードルは下がったにもかからず、視野を広げる・情報収集という目的はそこまで強くないことから、これらの要素は代替サービスや機会で補っていると考えられるでしょう。
インターンシップ参加後の選考参加意向
インターンシップ参加後の選考参加意向からも、インターンシップの位置づけを考えることができます。
■今までインターンシップに参加した企業の選考を受験する予定はありますか
項目 | 22卒 | 21卒 | 差 |
---|---|---|---|
全ての参加企業の選考を受ける | 22.7% | 20.5% | 2.2pt |
選考を受ける予定の企業もあれば受けない企業もある | 60.4% | 62.1% | 0.7pt |
インターンシップへの参加数が増えると、選考への参加は取捨選択の上で行われるために、「全ての企業の選考に参加」する割合は減るという仮説が立てられます。しかしながら、その割合は実際には大きく変わらず、むしろ少し増える結果となっています。
この結果を見ても、ただ「視点を広げる」目的というよりも「興味のある」企業・「本選考を受ける予定」の企業が開催するインターンシップに参加する傾向が読み取れます。
対面インターンとWebインターンの比較
学生のインターンシップ参加動機を踏まえて、対面インターンとWebインターンの満足度や違いについて詳しく見ていきましょう。
満足度が高いのは対面開催
インターンシップの満足度という観点では、対面がオンラインを上回る結果となりました。
■全体的な満足度
項目 | 対面 | Web | 差 |
---|---|---|---|
満足できた | 64.9% | 52.8% | 12.1pt |
どちらかというと満足できた | 30.7% | 42.9% | 12.2pt |
満足回答の合計 | 95.6% | 95.7% | 0.1pt |
満足度を決める要因には、企画や説明の内容だけでなく、休憩時間の会話や参加前後の人脈形成、雰囲気理解といった間接要因が含まれます。
これらの間接的な要因については対面開催の方が優れており、満足度の観点では上回ったと考えられます。
一方、コンテンツ以外の要因に左右される「満足度」が、選考効果に直結するわけではありません。コンテンツに対する評価は高くなくとも、休憩時間の会話などの要因により全体としての満足度評価が高くなる可能性があるのです。
そのため対面のインターンシップの方がWebインターンシップよりも選考効果が必ずしも高いわけではありません。
満足度だけにこだわるよりも、Web開催でのインターンシップに期待されている、企業・業界理解などの本来的かつ限定的な目的をきちんと達成できるコンテンツの提供が重要と言えるでしょう。
また、オンラインインターンシップにおいては接続不良や不慣れな進行がマイナス要因になってしまうため、注意が必要です。
対面とWebどちらを希望するか
次に、学生が希望するインターンシップの形態についてご紹介します。
■インターンシップの形式について対面とWebどちらがいいか
2021年1月時点では、対面開催を希望する声とWeb開催を希望する声は同じぐらいの割合になっています。
コロナ禍就活がスタートしたばかりの頃は「Webでは意味がない」といった論調もありましたが、現在は「オンラインが前提」という環境下で、徐々にWeb上での就職活動、インターンシップが受け入れられるようになってきたといえるでしょう。
学生視点から見るとWeb開催のインターンシップには、
①日程調整がつきやすく参加しやすい
②手元でのメモや知らない言葉の検索等、自分のペースでインプットができる
③居住地の制約を受けにくい
などのメリットもあります。
一方で「絶対にWebがいい」の割合が低いのは、運営の不慣れ感や、コンテンツのオンライン化による不足感が要因になっていると考えられます。今後の工夫次第では十分にWebが推奨される傾向になる可能性はあると考えられます。
印象の良いインターンシップの期間は1day
良い印象を抱いたインターンシップの期間についてのデータです。
Web開催が主流となった22卒では、短期間でのインターンシップ開催に良い印象を抱く傾向が顕著になっています。
Web開催のインターンシップでは、長時間の集中が困難であり、短期間で密度の高いコンテンツを提供することが求められています。
オンラインのインターンシップでは、そもそも社員の雰囲気や人柄を伝える目的を果たしにくいため、学生の期待も純粋な企業理解にあると考えられます、
一方、Web上での情報収集が主流となっている今、学生は企業理解に関してはHP、採用関連記事などを通してある程度の情報をすでに入手しているため、インターンシップでしか提供できない情報を精査する必要があるでしょう。
また、期間の短いインターンシップの注意点として、学生から見た就職活動全体の不足感や不完全燃焼感が挙げられます。内定承諾などの最終的な決定の際に、短期間のインターンシップだけでは判断のよりどころとして弱いと感じられることがあるのです。
この点については、インターンシップ後の座談会などでフォローすると良いでしょう。
インターンシップ以外の就活準備について
オンライン化に伴い、就職活動は、合同説明会や学内イベントなどの「参加する就活」から企業HPや記事を閲覧する「調べる就活」にシフトしています。
この変化に対応するためには、Webで戦うフィールドの整理が必要となるでしょう。
「学生が調べた時ちゃんとほしい情報が出てくるか」「ネット上の口コミに問題はないか」など、学生が閲覧する情報を整備しておきましょう。
また、学生自身がWeb上で情報収集をする傾向が強まっているため、イベントではWebではわからない情報や伝わらない魅力を伝えるコンテンツを工夫する必要があるでしょう。
OB・OG訪問が増加
就職活動のオンライン化による大きな変化の一つが、OB・OG訪問の増加です。
一時期はOBOG訪問に関わる事件性などが発生していましたが、オンライン化によってそうしたリスクや交通費など諸々の懸念点が解消されつつあります。
■OB・OG訪問した先輩はどこで知りましたか。
項目 | 22卒 | 21卒 | 20卒 |
---|---|---|---|
キャリアセンター | 22.5% | 27.7% | 15.6% |
OBOG訪問サイト | 25.3% | 17.5% | 9.3% |
SNS | 11.8% | 8.5% | 3.3% |
また、TwitterなどのSNSを通したマッチングも増加しており、Twitterを活用した採用マーケティングに力を入れる企業も増えています。
今後の採用活動の見通し
以上のデータの分析を踏まえて、今後の採用活動の見通しを考えていきましょう。留意すべき主な点は3つです。
今後の見通し①参加型から調査型へのシフト

就職活動のオンライン化とともに、イベントなどの場が主体となる参加型の就活から、ネットでの情報収集が主体となる調査型の就活へとシフトする動きが見られます。
この動きに対応するため、Webコンテンツの拡充が不可欠となります。ただコンテンツ量を増やすのではなく、就活生が必要としている情報や意思決定に関わる情報を充実させることが重要です。
質の高いコンテンツを作成するために、学生や内定者へのインタビューやアンケートを通してインサイトを集める野も一つの方法です。
今後の見通し②社内のデジタルリテラシーを伸ばす
オンライン主体でのイベントでは、接続不良や不手際は、デジタルネイティブ世代である学生に対してマイナスイメージを与えてしまいます。
オンラインでイベントを行う際には、デジタルネイティブ世代の期待値を下回らないような工夫が必要になるでしょう。
具体的には、
・オンラインイベントに合わせた時間配分やコンテンツ量・内容の調整
・接続やマイクの確認を前日や当日の10分前までに行う
・万一の時に使えるサブのPCを用意する
・聞き取りやすいように高品質マイクの用意や、話すスピードの調整を行う
・学生がスクリーンショットを撮る可能性は考慮してスライドを作成する
などです。
見通し③:選んでもらうための採用活動へ
これまでお伝えしてきた通り、学生の焦りやオンライン化による参加ハードルの低下といった環境変化から、学生一人一人の行動量が増加しています。そのため、学生がインターンシップや説明会などのイベントを踏まえて選考に参加するというルートが一般的になりつあります。
そういう意味では、以前にも増して”選んでもらう”ための努力が必要となります。
この”選んでもらう”ための取り組みは、採用ブランディングの手法から考えることが一般的です。

採用ブランディングの簡単な考え方として、こちらの枠組みを紹介します。ブランディングの第一歩はまず「知ってもらう」ことです。
その次に「よく知ってもらう」というステップがあります。
主にここを見逃しがちですが、ただ認知しているだけの情報は検討対象にはならないので、検討に値する程度の情報を伝える必要があります。
その次は「好意を抱いてもらう」というステップです。
ここでは主に年収や福利厚生といったハード面の情報よりも、組織の雰囲気や文化、事業の面白さといったソフト面の情報を提供し、学生の情緒に訴えかけるアプローチが求められます。
そして最後は「一番だと思ってもらう」というステップになります。
一般的に学生は、内定承諾時点で複数社の候補から就職先を決定しています。この選択段階においていかに高順位でいれるかが重要です。そのためには差別化、優位化された情報を提供することはもちろんのこと、その人が一番大事にしている価値観や志向性を把握し、それに適した体験、情報を提供することで、強い感動をもってもらうことが理想です。
また、採用ブランディングという概念は変わらずに重要性が増していますが、そのベストな手法はターゲットのインサイトと、外的環境の変化に合わせて刻一刻と変化します。環境やターゲット学生の潮流を掴み、自社が一番だと思ってもらうための適切なコミュニケーションを行うことを意識しましょう。