自社に合った人材を採用するために不可欠なことの一つが、適切な採用基準を設定すること。
しかし、就業経験のない学生を採用する新卒採用では、どのような採用基準を設定するべきか悩む方も多いのではないでしょうか。
選考基準を作る際には、大きく分けて以下の3つの工程があります。
・採用したい人物像を明確にする
・評価基準を決める
・採用の振り返りを行い仮説検証を繰り返す
本記事では、これらの工程について詳しく7つのステップに分けて詳しく解説します。
新卒採用における選考基準の作り方
採用基準が明確になっていない場合や、採用基準はあるけれどもうまく機能していないという場合は、ぜひ参考にしてみてください。
ステップ⓪経営理念・戦略からの落とし込み
採用活動を行うにあたり、経営層との対話ができていない場合は、まずはそこから行います。
経営理念や経営方針から現場までの一貫性が重要なのは、採用活動においても同じです。
経営理念・戦略から考えてどういう人材や組織が必要なのか経営者と対話した上で、採用活動の方針を明らかにしていきましょう。
採用基準の策定に限らず、採用目標の設定や採用にかける予算などを決定する上でも、経営層とのすり合わせは必要不可欠。
実際の採用施策に入る前に、必ずこの作業を行っておきましょう。
ステップ①現場社員へのヒアリング
まずは新卒社員を採用する予定がある部署の現場社員に対し、どのような人材がほしいのか、どのような人材なら活躍できるのかについて、聞き取りを行います。
それぞれの部署の仕事内容を踏まえて、どんな能力や資質が必要なのか具体的に聞き出すことが大切です。
例えば、個人での作業が多いデータを扱う仕事に、人と話しながらプロジェクトを進めることが好きな学生を採用してしまうと、会社全体としての方向性には共感していたとしても、ミスマッチが起こることになります。
例で挙げたような部署の採用に力を入れたい場合は、集中して作業を続けるのが苦にならないかどうかを採用の時点で確かめる必要があるのです。
ステップ②活躍している社員へのインタビュー
高いパフォーマンスを発揮する社員に共通する行動特性(行動動機、マインドセットなど)のことを「コンピテンシー」といいます。
このコンピテンシーを明確にするために、高いパフォーマンスを発揮している社員や周りの社員に聞き取りを行っていきます。
聞き取りを行う際は、成果を出したときの行動とその裏にある思考を聞き取っていきます。
以下は、コンピテンシーを明確にするための聞き取りの一例です。
【聞き取り例】
営業部の社員Aは、営業成績1位を獲得した。Aはクライアントのデータを独自にまとめ、商談前に全て頭に入れていた。これによりクライアントの状況に合わせた話をすることができ、結果を出した。
Aはこの行動に至った動機や思考として「状況の違うクライアントに対し同じセールストークでは響かないと感じたため、情報収集に時間を掛けた」と話した。
このインタビューから見えてくる社員Aの思考特性は、「現状のやり方に課題を感じたら主体的に改善する」「準備にしっかりと時間を掛けることができる」などです。
複数人にこうした聞き取りを行い、共通点を見つけながらコンピテンシーを整理していきます。
整理する際には、「コンピテンシー・ディクショナリー」で挙げられているコンピテンシーの項目を参考にするとよいでしょう。
コンピテンシーの領域 | コンピテンシーの項目 |
---|---|
達成行動 |
達成思考 |
秩序・品質・正確性への関心 |
|
イニシアチブ |
|
情報収集 |
|
援助・対人支援 |
対人理解 |
顧客支援志向 |
|
インパクト・対人影響力 |
インパクト・影響力 |
組織感覚 |
|
関係構築 |
|
管理領域 |
他者育成 |
指導 |
|
チームワークと協力 |
|
チームリーダーシップ |
|
知的領域 |
分析的志向 |
概念的志向 |
|
技術的・専門職的・管理的専門性 |
|
個人の効果性 |
自己管理 |
自信 |
|
柔軟性 |
|
組織コミットメント |
社会経済生産性本部生産性労働情報センター『コンピテンシー・ディクショナリー 各社事例にみる評価と活用』より
ステップ③選考での評価項目を決定する
新卒採用では、学生のポテンシャルを見て採用するため、基本的な資質を重視している場合が多いです。
2018年度の経団連の調査によれば、以下が新卒採用で多くの企業が重視している項目の上位5つです。
(1)コミュニケーション能力
(2)主体性
(3)チャレンジ精神
(4)協調性
(5)誠実性
参考:一般社団法人 日本経済団体連合会 2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果 https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf
これらの基本的資質を踏まえ、現場社員から聞き取った内容と、整理したコンピテンシーをもとに特に自社の採用で重視する項目を整理していきます。
現場社員が挙げた項目やコンピテンシー整理で上がった項目を全て評価項目に反映するのは難しい場合もあるため、優先順位をつけながら選考基準に反映する項目を絞り込みます。
ステップ④評価項目をもとに選考内容を決定する
ステップ③で決めた評価項目をもとに、それらをはかる選考の内容を決定していきます。「チャレンジ精神を重視したい場合は、困難に挑戦したエピソードをエントリーシートの設問に入れ込む」「協調性を重視したい場合はグループワークでの立ち回りを見る」など、具体的にどんな方法で評価するのかを決定していきます。
ステップ③で洗い出した評価項目を、それぞれ選考のどの段階でチェックするのか整理していきましょう。
ステップ⑤優先順位を決めシートを作成する
ステップ④でそれぞれの選考でチェックする内容を整理したら、選考の段階ごとの評価シートを作成します。
5段階評価や100点満点での評価など、評価の付け方を統一しておきましょう。
また、評価だけでなくその評価をつけた理由をメモする箇所も作っておけば、のちに「なぜその評価をしたのか」を振り返ることができます。
ステップ⑥採用活動を振り返りシートのアップデートを行う
評価シートは毎年同じものを使い続ければいいというわけではありません。会社の状況に合わせてほしい人材は変わっくるため、聞き取りを再度行い内容をアップデートすることも必要です。
また、明確な基準と統一されたシートを作ることで、後に「なぜうまくいったのか」「なぜうまくいかなかったのか」を振り返ることができます。
「○○という資質を測るには△△という方法では不十分だった」
「××という資質をもっと優先的に見るべきだった」
というような振り返りを行いながら、評価シートの内容をアップデートしていきましょう。
採用基準を明確にするメリット
最適な採用基準を設定するためのステップを解説しました。
経営方針とのすり合わせや現場でのヒアリングには工数がかかりますが、最適な採用基準を明確にすることで以下のようなメリットが得られます。
メリット①新卒採用の効率化につながる
採用基準が社内で統一されていない場合、人事の評価と現場社員や役員の評価とでずれが生じることになります。評価基準がずれると、「せっかく一次面接で通した学生が2次面接で全然受からない」といった具合に、選考の通過率が下がってしまいます。結果として、目標人数の採用に向けて多くの学生へのアプローチが必要となり、採用コストや時間が膨らんでしまうのです。
一方、評価基準がある程度統一されていれば、最終的に合格する可能性の高い学生を始めからある程度絞り込むことができます。
また、採用基準を明確にし、それを公開することで採用基準を満たす学生が集まりやすくなり、より効率的な採用につなげることができます。
メリット②新卒採用のミスマッチを減らせる
適切な採用基準をつくることは、入社後のミスマッチを減らすことにもつながります。曖昧な基準で評価している場合、本当に自社にマッチする人材かどうかを見極めることができず、結果として、入社後に「イメージと違った」「仕事になじめない」といった理由で離職する割合が高くなってしまうのです。
自社で活躍している人の特徴をもとに採用基準を作ることで、こうしたミスマッチを防ぐことができます。
メリット③採用活動におけるPDCAを回すことができる
明確な採用基準のもとに「なぜその人を採用したのか」を明確にしておくと、のちに「採用基準は適切だったのか」「足りない部分はあったのか」を検証することができます。
一方、「なんとなく」やフィーリングで採用してしまうと、もしその採用がうまくいったとしても、なぜうまくいったのかを検証できないため、再現性がないですよね。
採用におけるPDCAを回すためにも、明確な基準を持っておくことは大切なのです。
まとめ
新卒採用の評価基準をつくるための7ステップをご紹介しました。
評価基準は、採用活動の効率化やミスマッチ防止のために欠かせない要素の1つです。
基準が曖昧になってしまっていないか、改めて確認してみましょう。
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「評価基準を決めているけれどもそれを満たす学生がなかなか集まらない」
「そもそも母集団の数が足りない」
といった課題に対しても効果的なアプローチをご提案しています。
採用活動にお悩みの方はぜひ、お気軽にお問い合わせください。